
導入|「臭い」はジビエの宿命ではありません
ジビエに興味はあるのに、「臭そう」「クセが強そう」で止まってしまう。そう感じて、最初の一歩をためらう方は少なくありません。
先に答えを言えば、正しく扱われたジビエは、驚くほど味が澄んでいます。牛や豚より脂が軽く、香りは芳醇で、後味がきれいだと感じることさえあります。
では、なぜ「臭いジビエ」が生まれてしまうのか。そして私たちは、店でも通販でも、どう選べば失敗しないのか。
この記事では、現場で語られるポイントをかみくだきつつ、薬喰い(やくぐい)と直会(なおらい)という日本の食文化の視点も借りて、「おいしい入口」を整えます。
「本当に良いジビエ」の選び方を再探索
ここからは、通販店・通販。レストランでも使える「選び方」を、3つの基準にしぼって整理します。難しい理屈より、失敗しないための注意点として押さえておくと安心です。
選び方① 履歴が見える(誰が、どう扱ったか)
良いジビエほど、情報が隠れていません。
産地だけでなく、処理施設や解体の流れが見えるか。店なら、メニューやスタッフの説明で分かります。通販なら、商品ページに処理施設名・加工日・保管方法があるかが目安です。
情報がきちんと出ているのは、それだけ管理の自信があるサインでもあります。
選び方② 旬と食べ方の説明がある
ここで見るのは、「旬の動物」そのものではなく、その時期の状態に合わせた食べ方が説明できるかです。
説明が具体的なら、仕入れや扱いも丁寧なことが多く、結果として臭みの失敗が減ります。
- 猪(寒い時期)
脂がのりやすい。鍋なら、だしと野菜・薬味で脂をのばして香りを整える。炭火なら、余分な脂を落として香ばしさを立て、最後は塩や柑橘で締める。 - 鹿:赤身が主役
強火で表面を焼いて休ませ、火を入れ過ぎない。味付けは塩を基本に、ハーブなど軽い香りを添えると旨味がきれいに出る。
「いつ頃の肉で、どう食べるのがおすすめか」を一言で言える店(販売者)を選ぶと安心です。
選び方③ 素材の味で選べる(下味で隠していない)
ここで確かめたいのは、肉そのものの味が分かる選択肢があるかです。外食店なら、塩焼きやソテーのような「素材勝負の一皿」があるかどうかです。
販売店や通販なら、タレ漬けだけではなく、下味なし(プレーン)の精肉も選べるか。
味付けの料理や加工品があるのはもちろん良いのですが、タレ漬けや味付け済みのメニュー/商品しかないと、肉のよさを判断しにくくなります。
チェック表では、この基準を「味を隠さない」の欄で確認できます。

3つの選び方|販売店・外食店・通販のチェック表
迷ったときは、どの表でも 「履歴」「季節の設計」「味を隠していないか」 の3点だけ確認すれば十分です。
迷ったら、各表の「迷ったときのNGサイン」をチェックしてみてください。ひとつでも当てはまる場合は、別の候補に切り替えると失敗が減ります。
◾️販売店(精肉店・直売所など)
| 選び方 | 見る場所・聞くこと | 迷ったときのNGサイン |
|---|---|---|
| 履歴が見える | 処理施設名/加工日(または解体日)/保存温度の表示 | 「とれたてです」だけで具体がない |
| 旬と食べ方が分かる | その時期に合う部位提案(鍋向き・焼き向き等)がある | いつでも同じ部位だけが並ぶ |
| 味を隠さない | プレーン肉(下味なし)が基本、味付けは選択肢 | 味付け加工品しかない |
◾️外食店(レストラン)
| 選び方 | 見る場所・聞くこと | 迷ったときのNGサイン |
|---|---|---|
| 履歴が見える | 仕入れ先の説明がある/質問に具体で返ってくる | 産地名だけで話が止まる |
| 旬と食べ方が分かる | 季節限定メニュー/鍋・炭火・ソテーなど意図ある調理 | 年中同じメニューで理由が語られない |
| 味を隠さない | 塩焼き・ソテーなど素材勝負の皿がある | 濃いタレ・強い香辛料の皿ばかり |
◾️通販
| 選び方 | 見る場所・確認すること | 迷ったときのNGサイン |
|---|---|---|
| 履歴が見える | 処理施設名/加工日/保管(冷凍・チルド)/規格説明 | 情報が少なく、説明が抽象的 |
| 旬と食べ方が分かる | 入荷時期や数量/おすすめ調理/部位の使い分け提案 | 料理提案がなく、売り文句だけ |
| 味を隠さない | 下味なし(プレーン)の精肉も選べる | タレ漬け・味付け済みだけで選べない |

なぜ「臭いジビエ」が生まれてしまうのか
臭みの原因は、動物の種類や個体差だけではありません。多くの場合、差が出るのは「仕留めてから食卓に届くまでの扱い方」です。
押さえるべき要点は3つ——血抜き・内臓の処理・冷却です。この3つが手早く進むほど、肉の状態が安定し、香りがきれいに残ります。
反対に、獲物の体温が残ったままの時間が長くなると、肉の温度が下がらず、香りが濁りやすくなります。つまり「獣だから臭い」のではなく、温度と時間の管理が味と香りを左右する、ということです。
「どこの肉か」よりも、「いつ、どんな手順で処理され、どんな温度で保たれてきたか」。その情報がはっきりしているほど、臭みの失敗は起きにくくなります。
薬喰いから学ぶ、ジビエ選びの心得
昔の日本人は、ジビエをグルメとして消費していたわけではありません。
体を整えるための「薬」として、必要な時にいただきました。これが、薬喰い(やくぐい)の発想です。
猪は体を温めるもの、鹿は血を養うもの——そう考えれば、選び方の軸が少し変わります。
「クセが強いかどうか」よりも、「いまの自分が食べやすい種類と料理か」を意識すると選びやすくなります。
一度おいしく食べられれば、ジビエへの不安は自然と小さくなっていきます。
薬喰いの背景については、別記事で「山鯨」や隠語の話と合わせて詳しく解説しています。
直会の視点で考えると、店選びに品が出る
直会(なおらい)は、神に供えたものを分かち合い、いただく行為です。
ただ食べるのではなく、「いただく」気持ちを整える。この考え方は、ジビエを選ぶときにも役立ちます。
命を丁寧に扱う販売店やレストランは、肉の扱いも丁寧です。その積み重ねが、臭みの少ない仕上がりにつながります。
直会の考え方を知ると、「安いから」「有名だから」だけで決めにくくなります。
説明が丁寧か。扱い方が誠実か。
そこが伝わる店ほど、失敗しにくくなります。

初心者が失敗しにくい「最初の一皿」
まずは、鹿か猪。この2つから始めるのが安心です。鹿は脂が少なく、赤身の旨味がまっすぐです。牛の赤身が好きな方ほど、入りやすいと思います。
猪は脂の甘みが魅力です。鍋にすると香りが丸くなり、初めてでも食べやすい。
部位で迷うなら、店では「おすすめ」を聞くのが一番です。
通販なら、まずは加熱調理向きの部位や、調理提案が丁寧な商品から選ぶと失敗が減ります。
安全面では、生食を避け、中心までしっかり火を通す。この基本だけは、必ず守ってください。
まとめ|臭みの不安は、選び方で小さくできます
ジビエの臭みは「獣だから仕方ない」というより、扱い方と温度管理で起きやすさが変わります。
だから店でも通販でも、選ぶときに見る場所を決めておくと安心です。ポイントは3つです。
- 履歴が見える。
- 旬と食べ方の説明がある。
- 味を隠さない選択肢がある。
この3点がそろうほど、最初の一皿がうまくいく確率は上がります。
薬喰いと直会の視点は、「何を食べるか」だけでなく「どういただくか」を整えてくれます。
最初は、説明が丁寧で、質問にもきちんと答えてくれる販売店やレストラン、あるいは情報がそろった通販から始めてみてください。

